みてみようよ

現在、摂津市東別府にある関西地盤環境研究センターは設立された1981年当初、守口市大日(旧守口試験所)にありました。名称も現在と異なり、「関西土質研究センター」としてスタートしました。

敷地面積 約400㎡

その後1990年に点野に分室を設置(1990年-1997年)。1997年には試験設備の増加と効率化のため、摂津市東別府に土地・建物を取得。A棟とB棟を設置しました。2003年には名称を「関西地盤環境研究センター」に変更しました。

敷地面積 約1,500㎡

2009年、C棟を増築し現在の姿となりました。同年守口試験室は28年間にわたるその役目を終えました。

C棟 増築

センター内部

職員数:17 名
組合員数:47 社

試験機器:45 台
年間試験受注数:約 1,800 件(2020年度実績)

組織図

地盤技術室

土質・岩石試験を実施し、高品質なデータを提供。電子納品業務も実施するセンターの中核部署

品質管理室

ISO90001(品質マネジメントシステム)の維持・管理業務を実施。外注先、購買先の評価・管理を実施

総務経理室

経理:伝票整理、入金・出金の管理、決算書の作成等の業務を実施
総務:電話応対、給与計算、社会保険関係手続等の業務を実施

試験設備

  国内でもトップレベルの試験設備の数々

Q.1

誕生の経緯は?

1977年5月に地質調査業が構造改善事業の特定業種に指定されたことに端を発し、関西地区でも構造改革への協議が繰り返され、1980年12月16日、組合員の出資により、「業界をささえる試験機関」として設立されました。

Q.2

なぜ調べるの?

道路や橋などのインフラ設備を建設する際には、そこの地盤がその建設物に対して十分な強度・耐久性を持っているかを調査する必要があります。

Q.3

なにを調べるの?

土には、土粒子(個体)、水(液体)、空気(気体)が含まれており、その割合の差により、どろどろの土であったり、カチカチの土であったりという状態になります。硬さ、もろさ、水の通しやすさなど性質が変わってきますので、精緻な分類を行う必要があります。

試験項目

土質試験

物理試験
化学試験
材料試験
力学試験

岩石試験

岩石試験
骨材試験
コンクリート試験
 

日々、土質試験のプロ集団として、確かな品質と信頼のため厳密な試験を続けている。次は主な業務の流れを見て行きましょう。

道路が出来るまで

建設計画

調査計画

建設予定の地盤が新設構造物に耐えられる地盤であるか、地盤調査の計画が策定され、その中の室内土質試験の依頼が来ます。

試験計画

設計に必要な物性値を求めるための適切な試験方法や、また試験スケジュールを計画します。

試料到着

現地で採取した試料を受取ります。また、現場に直接引取りに向かうこともあります。

試験

室内土質試験の一例を紹介します。

液性限界試験
一面せん断試験
三軸圧縮試験

結果報告

室内土質試験結果を整理し報告します。

調査完了

構造設計

各々の調査及び試験結果を報告します。

得られた調査結果に基づき、設計を行います。

工事開始

完成

設計結果に応じた工事が始まります。

三好 功季技術職員の1日

●プロフィール

三好 功季(ミヨシ コウキ)
2013年4月入所
地盤技術室所属
技術士補

●職場の雰囲気は?

和気あいあいとした明るい職場の空気に助けられ、入所当初の不安な毎日も乗り越えられることができました。様々な現場や試験の経験をさせてもらうことで、自然と鍛えられ、乗り越えられました。今では入所したての新人の教育担当を任せられています。

9:00業務確認
9:30依頼書確認
10:00報告書確認
11:00スタッフと予定の確認
12:00昼食
13:00試験開始

三軸圧縮試

採取前の土被り圧を試料に与えて、地盤の強度を計測する試験です。

現場で採取した試料を経験豊富なスタッフが取り出し、切断。
試験用に外側を削り成形して乱れの少ない試験体を作製します。

三軸圧縮試験機に試料をセットして要望にあった試験条件を設定。試験が終了するまでに数時間かかるので他の試験作業へ

翌日、結果を確認し、報告書にまとめる

16:00試料の整理・保管
明日の試験に向けて準備を行う
17:30終業
終業後も、知見を広げるため資格取得の勉強は欠かせない

松川 尚史センター長の1日

●プロフィール

松川 尚史(マツカワ ヒサシ)
1999年4月 入所
2012年4月 地盤技術室室長就任
2017年7月 センター長就任

●求める人材像とは?

・明るく、前向きに業務に取り組める
・経験していくにつれ、専門的な知識は身に付ける

9:00受注量確認
受注量の推移や進捗と今後の見込みを各部署と共有する
9:30事務処理
10:00請求書処理
11:00見学会開催用資料の作成
12:00昼食
13:00試験データ・進捗チェック
試験室へ赴き、状況を確認する
16:00事務処理
17:00顧客対応・相談対応
建築予定の案件について、資料の確認や試験項目の提案を行う
17:30終業

センタ一、一気に若返る

2010年4月時点の
センター職員平均年齢
2020年4月時点の
センター職員平均年齢

センターでは、この10年、職員の新卒採用に力を入れてきている。しばらく採用のない時期が続いたのだが、2013年に、4年ぶりに新入職員の入所があり、その後は毎年1~3名の新入職員を採用している。
一時は20代の職員がほとんどいないという時代もあったのだが、ここ数年は20歳前後のニューフェースが毎年センターに入所することで、現在では20代職員は6名となっている。その結果、10年前と比べ、職員の平均年齢も39歳から36歳へと若返った。明るく元気でキラキラな若手職員たちによって、職場はますます活性化してきている。
少子化が進むなか、業界が活性を続けていくには、この業界が未来を担う若者からいかに魅力を感じてもらえるかが重要である。センターでは、業界を牽引すべく、現役の学生へのアピール、情報発信などに力を入れ、引き続き新卒採用に力を入れていく。

コロナ禍という緊急事態

2020年、新型コロナウイルス感染症というパンデミックが世界を襲った。未知のウイルス、欧米では多数の死者が出た。日本でも2月頃から徐々に感染者が増え始め、遂に4月には全国で緊急事態宣言が発令し、さまざまな自粛要請、休業要請などがなされた。緊急事態宣言は、その後も全国レベル、もしくは地域を絞って繰り返し発令されている。三密回避、ソーシャルディスタンスといった言葉はすっかり日常語として定着し、流行語大賞に選出されるほどにもなった。人々の対面での接触機会は著しく減った。土質試験という仕事は、機械を使って行うものなので、センターにおいては、通常の業務に影響が出ることはほとんどなかったが、理事会・各種委員会等の組合各社との会議や打ち合わせといったものは、すっかりリモート会議で実施されるようになった。慣れぬ画面を通しての意見交換にはとまどったり、パソコンが固まったりするなどのトラブルもしばしあり、意思疎通の難しさを感じることもあった。しかしこれは、新たな可能性を見つける場ともなった。2021年になり、日本ではようやくワクチン接種も始まり、コロナ禍の出口も見えつつある。ここで得た働き方の幅をコロナ禍終息後もセンターでは生かしていく。

土質試験管理者制度 始動!
試験技術者の地位向上を目指し

土質試験品質確保機構
左から 杉井副会長、西垣会長、西形副会長

業界発展のために、さまざまな新しい取り組みがこの10年に始まった。その一つがジオ・ラボネットワークが立ち上げた「土質試験管理者制度」だ。この資格認定制度は、土質試験データの品質確保を高めるとともに、技術や豊富な知識を次世代に引き継ぐための管理者を育成し、ひいては試験技術者の地位向上に寄与していこうというものだ。2018年に始まり、これまで全国で17人の認定管理者が誕生しており、当センターでも、3名が有資格となっている。まだ始まったばかりで認知度も低く、資格者も少ないが、次の10年には資格をもった管理者たちが増え、業界を牽引していってもらえるようになるはずだ。

ネットワークが新たなフェイズに
「ジオ・ラボネットワーク」がこの年から「研修会」を開始

全国9つの土質試験協同組合が連携協定を結び、2007年度に「ジオ・ラボネットワーク」が立ち上がった。組合間の連携を強化し業界の技術者の質を高めていこうという狙いだ。
ネットワーク開設当初は、年1回程度の各組合持ち回りの「交流会」を開いていたが、これは親睦を深めるための観光旅行的要素が色濃いものだった。しかし各地を一巡し、顔合わせも終わったことから、2013年に「交流会」は「研修会」となり、本格的な技術研修&勉強会の場へとシフトした。各組合独自の試験方法や裏技的な技術を披露したりと、刺激的な相互交流が図られ、よりレベルの高い業界集団の育成へとつながっている。
ジオ・ラボネットワークではさらに、年2回、地盤工学研究発表会と全地連「技術フォーラム」にも展示ブースを出展。土質試験専門機関と土質試験の重要性を啓蒙し続けている。

「zスコア」・「不確かさ」を確かめる

当センターは、地盤材料試験の職人集団であり、技術者集団であり、そして研究者集団だ。研究者集団としての証となる各種学会などでの発表論文の詳細はこちらのページにある通り。地盤材料試験に関して幅広く多様な研究が進められていることがわかるだろう。そのなかで、近10年、とくに力を入れて取り組んできた研究テーマが測定や試験をするうえで重要な「技能試験」と「測定値の不確かさ」の研究だ。
不確かさの要因分析の研究では日本一である、当センター顧問、澤孝平工学博士を中心に、研究が進められてきた。標題の「z≦2」の「z」は技能試験の評価の指標であるzスコアで、この値が2以下のとき試験結果は「満足」と判断される。「k=2」の「k」は、測定値の不確かさを表現するために使われる包合係数で、k=2のとき、信頼水準は95%に相当する。「z≦2」や「k=2」は技能試験や不確かさ研究を象徴するともいえる係数値ということだ。是非、当センターのさまざまな発表論文を読んでいただきたい。

センターを災害に強い試験室へ (BCP対策)

ハザードマップにおける当センターの所在地。
1階部分が水没する地域に位置することがわかる

台風や大雨による河川の氾濫、洪水といった大規模被害は、年々、各所で頻発するようにもなっている。そこで国は、大災害やテロなどの緊急事態発生によって被害を受けた中小企業が事業を継続できなくなるのを防ぐため、中小企業へ向けてBCP対策(事業継続計画)の策定を推進している。
当センターが所在する摂津市東別府は安威川と淀川にはさまれていて、近隣河川の氾濫で浸水リスクが非常に高い地域だ。実際、大雨でセンター前の小さな川があふれ、センター駐車場まで水が上がってきたこともある。BCPにおいて、浸水対策というのは重要なポイントだった。
2019年10月、関東・甲信越・東北を襲い、甚大な被害をもたらした台風19号によって、長野県では千曲川が決壊し、長野市にある新幹線車両基地が冠水するという事態が起こった。車両基地に停まったいくつもの北陸新幹線が水に浸かったニュース映像がテレビやネットで流れた。これは、センター職員にとって大きな衝撃映像となった。この映像に衝撃を受けたのは、センター内だけではない。組合員もそうだ。11月の臨時総会で、浸水対策を心配する指摘がなされた。 こうしてセンター内外の気持ちが一つになり、「今こそ、BCP対策を実行に移すべきとき!」と、試験機を1階から2階へ移設することが決定。これは 4.5メートルの嵩上げになることから、ハザードマップで想定されるこの地域の浸水リスクも回避できる高さである。